留学の長所と短所

執筆者
池上 浩太(プリンストン大学ゲノム研究所)
留学先
アルバートアインシュタイン医科大学
ノースカロライナ大学チャペルヒル校生物学部

読者の皆様、こんにちは。米国プリンストン大学のゲノム研究所で働いている池上浩太です。ポスドクとして渡米し、Principal Investigatorのポジションを得るべく悪戦苦闘している内に(まだ苦闘中ですが)、今年が渡米8年目となりました。このコラムでは、留学を考えている皆様に向けて、その長所と短所について私の意見を紹介したいと思います。

まず結論を先に述べておこうと思います。私は留学を強くお勧めします。留学は視野を広げ、今までとは異なる観点から人生を考えさせる貴重な機会だと思います。

私が考える留学の長所は、日本という枠組みから解き放たれる点です。国内で生活していると、我々は無意識に日本的な考え方・時間の使い方・キャリアの歩み方を辿っています。留学の大きな利点は、自分とは全く異なる道を歩んできた人や、全く考え方の異なる人と日々を共にできる点です。留学は、自分の歩んできた道、そしてこれから歩むべき道を新たな視点で考えるチャンスとなると思います。

長所と短所の境界には、どちらにも転びうる無数の事柄があります。例えば、研究の成功や職の獲得などがこれらに当たります。留学経験が自分のキャリアの上で長所となるか短所になるかは、留学目的の設定、留学先の選択、個々の才能、根気、工夫、そして運に大きく委ねられていると言えます。これまでに寄稿されている方々の記事からもこの点にお気付き頂けるかと思います。

私が考える留学の短所は、日本から物理的に遠く離れるということです。親や親戚に万一があった時、最期に間に合わないこともあり得ります。親や兄弟に介護が必要となった時、留学の決断は容易ではないでしょう。国を離れることは、パートナーに休職や退職を迫らざるをえないこともあります。子供には年齢によって転校が必要なこともあります。私の書いた長所と短所は表裏一体をなすわけですが、年齢を重ねるごとに短所の比重が大きくなっていきます。

留学を考えている皆様には、留学経験のある先生や先輩に色々お話を聞いて見るとよいと思います。その上で、是非国外に羽ばたき、日本の枠組みに捉われない考え方やキャリアの選択に触れて、各界にブレイクスルーをもたらして頂きたいと思います。日本を客観的に見ることができる識者が留学を通して確保されることを、日本の発展のために願っています。

2015/05/19

関連タグ
留学前ドキドキ編,
帰国編
留学のすゝめ!
執筆者紹介
略歴:東京大学大学院農学生命科学研究科の博士課程所属時にアルバートアインシュタイン医科大学に短期留学。東京大学で博士号取得後、2007年よりノースカロライナ大学チャペルヒル校生物学部でポスドク。ラボの引越しに伴い、2013年よりプリンストン大学ゲノム研究所にて勤務。専門はゲノミクス、核動態、遺伝子制御、バイオインフォマティクス。ホームページは「http://kohtaikegami.wordpress.com」。ご意見、ご質問などは「ikgmkあっとprinceton.edu」でお待ちしております。(「あっと」を@に変更して下さい)
編集後記
たしかに,海外に出ると(良くも悪くも!)本当に色々な考えの人達がいることに気づきます.この経験は日本という島国だけで生活しているとなかなか気づかないことですね.また,親兄弟,家族の要素は留学するときには重要になってきます.いわゆる2-Body Problemということも議論すべき大きなトピックになります.
編集者
本間 耕平
UJAでは留学体験記を執筆して下さる方を随時募集しております。ご興味のある方は、UJA留学体験記編集部までお気軽にご連絡下さい。留学体験記 編集部: findingourway@uja-info.org