生涯サイエンティストとして成功することとは

執筆者
池田 史代 (IMBA,ウィーン)
留学先
ゲーテ大学 生化学第二講座 (フランクフルト)

あなたは生涯のうちに何を達成したいですか? たとえ今はっきりした答えがなかったり、答えが変わったりしてもよいですが、この質問を頭において毎日を過ごすことがとても大事だと思います。これをふまえて、海外でサイエンスをすることが、個人にとってなんの意味をもつのかがずいぶん変わってくるのだと思います。 私の場合は、自由な発想に基づいて、自由なアプローチでBig questionにチャレンジできるポジションをなるだけ早く獲得するというのが、とても大事な点でした。また、私はどうしても世界的に一流の独立したサイエンティストになりたい、そして、国際的なチームを組んで問題に取り組みたいという強い思いが、大学院学生のころからありました。努力はまったく惜しまない覚悟は十分にありましたし、生物学的現象はものすごくおもしろいと興味津々でしたが、私はこの業界で、しかも世界レベルで、はたしてやっていけるのだろうかという、とても大きな懐疑的な思いもありました。 さて、大学院時代にはたくさん学ぶことがありました。しかし、実際は4年経っても何がより意味をもつ可能性があるのか、それをどう同定するのか、なにが大事な問題なのかについて、考える方法が少しだけわかった程度でした。きっと一番大事だったのは、サイエンスに対する興味と情熱がさらに増したことだと思います。 その後のポスドクポジションの決断は、そのときの状況としては、おそらくとても変わった選択だったと思います。クロアチアでのラボの立ち上げ、いろんな学生の指導、ドイツでの大学教育プログラムに関わったりなど、6年以上の長いポスドク時代にはいろいろな経験をしました。プロジェクトや論文発表についてのみならず、いろいろなラボメンバー、共同研究者との信頼関係を築くことについても多くを学びました。ポスドク後のポジションについて考え、独立したいと思ったとき、ひとつとても大きな決心が必要だったことを思い出します。それは、私の目標をより早期に達成するには、おそらく海外でなくては難しいこと、その場合、かなり長いタームのコミットメントが必要だということです。これが何故大きな決断なのかというと、多くの場合、自分1人だけが関わるわけではないからです。家族やパートナーもそうですし、チームを組めばそのメンバーのプロジェクト、教育と雇用に対する責任も重大です。自信を持って大事な決断をくだすためには、やはり多くの失敗、そして成功の両方の経験が必要だと思います。目標がクリアであると、必要な経験もある程度具体的になるので、やはり最初に挙げた質問について頭においておくことは重要だと思います。 以前あるサイエンティストに、こう言われて納得したことを思い出します。「この業界では、もちろん努力は必須だけれど、まぁなるようになる(なるようにする)とポジティブに考えられないと、到底やっていけない」――どうなったとしても、きっと人生はそういうものなので、おもいっきりやってみて、楽しんだらいいのだと思います。世界中の人と一緒に働いたり、Big questionについて討論したりできるのはとてもいいものです。そして、次の場所がどこになるのかわからないことも、実際はチャレンジングであると同時になかなか楽しいものです。

2015/11/19

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編集後記
池田さんの文章に勇気づけられた思いがします.まさにBig questionに連携・協力して立ち向かうのが研究者のスタンスであり,自分一人だけの小さな世界に閉じこもっている場合ではないですね.そのためにも大きな夢を語りあえる仲間は大変貴重だと思います.留学ではスケールが大きい人たちとたくさん出会えるのもメリットになります.
編集者
本間 耕平
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