研究だけじゃない、留学中だからこそできることを見つけてやってみよう

執筆者
照沼 美穂(Department of Neuroscience, Psychology and Behaviour, University of Leicester, United Kingdom)
留学先
University of Pennsylvania (Philadelphia, USA)
Tufts University (Boston, USA)

日本を出て今年で10年、あっという間だったなというのが正直な感想です。海外でポスドクをしようと決めた時、将来的にはどこかで自分の研究室を持てたらいいなと漠然と思っていました。ただ私自身は歯学部出身で、周りの基礎の先生、臨床の先生共に皆さん2〜3年という短期間の留学で帰国されていて、果たして本当に海外で独立することが可能なのか不安でした。そんな私がポスドク先に決めたのは、大学院時代に共同研究先として合計6カ月ほど短期留学していたラボです。当時ラボはロンドン(University College London)にありました。まだまだそこで様々な手技を学びたいと思ったのと、PI(Principal Investigator:ラボのボス)の人柄が素晴らしかったのが主な理由でした。そしてもう1つ重要だったのが、そこのポスドク達の多くがその後のキャリアとして独立して研究室を運営しているということでした。私がポスドクとして参加するときにはラボはアメリカに移っており、全く見知らぬ土地で新生活はスタートしました。

最初の数年は早く筆頭著者の論文を出したいと実験に没頭していたのですが、そんな日々の中でボスに言われていたのがフェローシップに挑戦することでした。「アカデミアに残りたいのであれば、研究費を自分で取った実績がないと、いくら論文が良くても独立するのは難しい」というのが彼の意見でした。運良く2年目には日本のフェローシップを、そして3年目からはアメリカのフェローシップとグラントを続けて取ることができ、結果的に独立することができました。特にアメリカのグラントにアプライし幸運にも成功した経験が、海外で独立したいという気持ちをより大きくし、挑戦するきっかけとなりました。このほかにも大学院生の実験や学位論文の面倒を見たり、自分のプロジェクト以外にも共同研究者と論文を発表したり、学会で口頭発表したりと、少しずつ研究者としての実績を積み上げていきました。このようにコツコツと準備していったことが結果的に今に繋がっていると思います。これらは勿論ボスのサポートがあったからこそ出来たことで、本当に感謝しています。

PIになって少し経ち、今客観的にポスドク達を見て思うことは、アカデミックなポジションだけでなく企業の研究職や雑誌のエディターなど、どのような職業を将来選択するにしても共通してポスドク期間中にやるべきことがあるということです。それはズバリ「世界規模のネットワークを自ら積極的に作る」ということです。留学中は学会やシンポジウム、ワークショップなどがとても身近にあり、世界中の同年代の研究者や論文でしか知らない憧れの研究者、また各国企業の研究者や有名雑誌のエディターなど、様々な方々と直に話す機会が度々あります。このような場所で構築していったネットワークが今後ずっと大事になっていくと思います。また留学中の日本人だけでなく、日本人の研究者全般に共通しているのが英語の問題です。留学中は「英語で質疑応答がきちんとできない」、「説得力のある文章(論文)が英語で書けない」などといった問題を改善するチャンスです。是非ラボでも外でも積極的に会話をし、研究発表会などで発表する時には発表前後に同僚やボスからアドバイスをもらいましょう。学内の様々なセミナーに行って人の発表を聞くことも良い勉強になります。英語でグラントも書いてみましょう。このような日常からきっと将来の方向性が見えてくると思います。

最後にJSPSロンドン(日本学術振興会ロンドン)の最新ニュースレターには日本人研究者の受け入れに熱心な英国の大学に所属する日本人PIのリストが掲載されています。私もその1人です。ほかにも様々な記事が掲載されていますので、イギリスで研究生活をしてみたい方は一度読んでみることをお勧めします。

ニュースレター第45号のURL:
http://www.jsps.org/newsletter/JSPSNL_45L.pdf

JSPSロンドンのサイト:
http://www.jsps.org

2015/11/19

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編集後記
照沼さんが書かれているように、留学中は実験をするだけではなく、色々なことにチャレンジしてみましょう。その結果、みなさんの将来の可能性はきっと広がります。
編集者
川上 聡経
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