若者よ、人生は一度だ。世界で活躍しよう!

執筆者
北島 政樹 (国際医療福祉大学・学長)
留学先
ハーバード大学、マサチューセッツ総合病院(アメリカ)

最近、日本の若者が外国留学に対して積極的でなく、一つの社会問題にもなっている。

文科省データによると明らかに「内向き」傾向であり、2010年の留学者数は5万8060人と前年の5万9923人と比較して3.2%減少し、ピークである2004年の8万2945人と比較すると、実に30%の落ち込みようである。ワシントンポストなどによると理由の一つとして景気の悪化と並び日本人の「草食(grass-eat)化」を挙げている。すなわち日本の若者はリスクを避け、自分の世界で満足しようとする傾向があるとしている。一方で、ここ数年、米国の大学は急ピッチで学費が値上がりしており、米国の学生でさえ、60%が返済義務のある奨学金やローンを抱えているのが現状である。このような時代背景の中で日本から海外留学する学生数の減少はアメリカへの留学者数減少が主要因であることがわかる。

この社会問題を解決すべく国際教育を担う大学も危機感を感じ、グローバル化の時代に学生が異なる文化や人々と接する機会を持つよう種々の企画を立て、推進しているが実績が挙がらないのが現状のようである。

私が現在学長を務めている国際医療福祉大学においても大学の理念の一つに国際化があり、学生の間に出来るだけ多くの学生を国外留学に送り出す努力をしている。帰国後、留学生から次世代を担う後輩に実体験を語らせ効果を挙げている。一方で留学に積極的になれない要因としては経済的問題も考慮されなければならない。一般的に大学が経常経費や国際交流基金から捻出可能ならば良いが、大部分の大学ではこのような原資は十分有していないのが現状である。

さて、私の場合にはポスドクの立場で留学し、多少立場が異なるが、1ドル310円の時代であり、年俸1万ドルであった。生活は決して楽とはいえないが、給料をもらえるのはまだ良いほうで、東南アジアや南米からの留学生はほとんどが給料は無く、自前の準備金で留学に来ていた。私は慶應義塾大学外科の先輩の留学先であったHarvard大学、MGH(Massachusetts General Hospital)のフェローとして留学した。当初は誰もが苦労する語学の問題に直面したのは否定し得ない事実である。さらにメンターの教授(Dr.John F Burke)とのミーティングの会話の中で「こんなことは簡単なことなので話す必要はないだろう」という、日本人独特の美徳は逆に通じないことを理解した。積極的な発言こそ必要なのだと感じたことは早期の収穫であった。

また研究の成績の中で教授と意見が分かれた時など積極的に出かけて行って意見を聞き、理路整然とメンターに説明したところ納得して下さり、自分の研究データの信憑性に自信を持ち、対応することなども貴重な経験となった。またメンターからの教訓がその後の外科医人生に多大な影響をもたらした。すなわち医工連携の重要性である。MGHとMIT(Massachusetts Institute of Technology)との交流の成果を、直接体験できた。これが将来、慶應義塾大学外科における内視鏡・ロボット手術に繋がったわけであり、”Academic Surgeon”としての理念が培われたといっても過言ではない。

さらに留学経験は多文化の理解と人脈のネットワーク構築の大きな財産となった。私が常々、慶應義塾大学外科の若い人々に言ってきた事、すなわち「君たちが将来、大学教授、学会長などになりたいと思っても簡単になれるものではない。普段の努力を怠らなければ周囲の人々が押し上げてくれる。」という言葉である。私の外科医人生を振り返ってみても万国外科学会、国際消化器外科学会等、国際学会の会長、また米国、英国王立、ドイツ、イタリア外科等の名誉会員、ブロツワク大学(ポーランド)やセンメルワイス大学(ハンガリー)の名誉博士号など周囲の人々によって推薦していただいた名誉に他ならない。さらに世界最高峰の医学雑誌NEJMの編集委員も外科医としての実績、すなわち万国外科学会におけるGrey-Turner記念講演とHarvard大学に留学していたという貴重な経験が後押ししてくれたものである。留学経験がいかに人生に多大な好影響を及ぼすか、すぐに回答は出ないかもしれないが果敢に若いときにチャレンジしないと留学経験は手に入らない。

私が講演などで好んで用いる福澤諭吉の名言があり、私自身も今も尚、心の奥に秘めている。それは「自我作古」であり、「我より古(いにしえ)を作(な)す」である。この意味は前人未到の新しい分野であっても困難や試練に耐えて、開拓に当たる勇気と使命感を表している。

2015/04/19

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編集後記
北島政樹先生とは、2014年8月の癌治療学会でお会い致しました。癌治療学会とUJAとの連携したセミナー「成功秘訣の世界基準」 で、基調講演の司会の労をお取り頂きました。基調講演でDr. Naredi (European Cancer Organizationの次期プレジデント)が述べられたキャリアへのアドバイスが、更に印象深いものになるようにと、ウィットに富んだ司会で会場の皆様に伝えて下さいました。”普段の努力を怠らなければ周囲の人々が押し上げてくれる。”、この一文には、周囲を気遣い、人々の為を思う不断の姿勢の大切さも込められているのだと思います。北島先生、ご寄稿頂き有難うございます。(佐々木敦朗)
編集者
Atsuo Sasaki
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