サイエンスにおける多様性と独創性について思うこと

執筆者
梶村 真吾(アシスタントプロフェッサー、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF) 糖尿病センター・幹細胞研究所)
留学先
ハワイ大学大学院、ミシガン大学大学院(大学院)、ハーバード大学医学部・ダナファーバー癌研究所(博士研究員)(アメリカ)

私は学部を卒業してからアメリカに移り、今年ではや15年になります。しかし特に最初からアメリカで独立を!と意気込んでいたわけでもなく、英語も決してネイティブではなく、好きな食べ物ベスト3は、お寿司・カレー・イチゴのショートケーキと、いわばベタな昭和生まれの日本人です。

私は日本での研究経験が少ないだけに勝手なことは言えませんが、日本とアメリカのサイエンスは、おそらく基本的には変わらないでしょう。野球に例えるならば、日本リーグとメジャーリーグのように、基本的には同じルールの上でプレーするスポーツですが、プレースタイルが違うのかもしれません。イチローやジーター程の超一流選手であればどこにいても活躍できるでしょうし、どちらのプレースタイルに合うかは結局その人次第なのだと思います。近年の日本における研究環境の充実度(施設や資金面など)を考えると、短期的なサイエンスの進歩という面では、海外留学することが必須という時代では既にないと思われます。

では長期的に考えるとどうでしょうか? 歴史を見れば明らかなように、サイエンスにおける大きなブレークスルーは、往々にしてカオスと想定外の発想から生まれます。アメリカに関して言えば、ここは多国籍国家ですので、日本社会における常識が必ずしも通用しないことがしばしばです。特に、私が住むサンフランシスコは、アメリカでも特にリベラルな場所ですので、おぉ!? と思う奇人・変人(良い意味でも悪い意味でも)が結構います。それと同時に、シリコンバレーにおける革新的な進歩が良い例ですが 、世界でも類のないイノベーションの拠点となっています。私個人的に今思うことは、ヒト・文化・思考の多様性、それを許容する寛容性、そしてそれらをまとめる合理的な決定力というものがイノベーションを育む環境として好ましい。そして、自分の中で今まで当たり前と思っていたはずの常識が打ち破られる環境に思い切って飛び込むことは、おそらく長期的なサイエンスの進展にはよい方向に進むだろうと思います。私が現在、研究室を運営するカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)は、この地域のリベラル性を体現するような学校で、リクルートされた際に言われたことは、「バクテリアでもサカナでもヒトでも好きな研究をなんでもやってください。ただし、最高のクオリティーかつ研究費を取って来られるなら。6年後くらいに結果を見せてちょうだい(つまり、最初に用意してくれたスタートアップ資金以上を研究費の間接経費として大学に持ってこいということ)。」ということだけでした。私のような日本からやって来た若者(といってもアラフォーですが)に、これほどの自由と責任を負わせてくれるのは、本当にありがたいなと思っています。

もう一点、アメリカの研究大学に限って言えば、自分自身がどれ程ユニーク(独創的)かつtrailblazer(開拓者)であることが重要視されているように思います。アメリカのように世界中から研究者が集まり、非常に厳しい競争原理が働く社会においては、かつてのようにトヨタ・カローラ(素晴らしい車ですが)を大量に売るスタイルよりも、テスラ(最近の電動自動車)を開発し、新たなマーケットとブランドを開拓する時代に移行しているからかもしれません。その意味では、日本から新しい思想や技術を持ったユニークな日本人研究者には、むしろ有利な環境でしょう。また私自身も、 trailblazerと呼ばれ続ける存在でありたいなと思っています。そのためには、周りの皆が挙って右へ向かう時に、敢えて左に進路を取る勇気と胆力が大切かなと思う次第です。

2015/04/19

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編集者
西田敬二
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