夫婦で海外研究留学

執筆者
檀崎 敬子
留学先
Duke University Medical Center(アメリカ合衆国)

私は、国内の大学院で博士を取得して3年目に突入したばかりの研究者です。現在はアメリカでポスドクとして働いています。大学院を修了した時には、当時既にアメリカに留学していた先輩研究者と婚約をしていたのですが、自分も海外留学できるとは考えていませんでした。理由はいくつかありました。

1つ目は金銭的な理由です。卒業したてで貯蓄がなく、返済しなければならない奨学金もあったので、お金のかかる海外留学は難しいと思っていました。2つ目の理由は、夫(当時はまだ婚約者でした)と近い海外赴任先を見つけられる自信がなく、自分は日本で夫の帰国を気長に待つつもりでいたからです。また、海外留学終了後に日本で就職先を探すのが大変厳しいと聞いていたので、もし夫が日本で就職先を見つけられなかった時の保険として、自分が日本で就職するつもりでした。率直に言うと、2人そろって(海外留学という)危険な橋を渡るのはやめておこうと思ったのです。ですが、そんな折、夫の赴任先の研究室でポスドクのポジションに空きが出て、研究室のボスから「婚約者の彼女を後任にどうか?」と夫に提案がありました。寝耳に水の話で、大変悩んだのですが、(1)夫が既に赴任していることから生活基盤は整っており多額のお金を用意する必要がなかったこと、(2)夫の帰国を待たずに同居、結婚できること、(3)赴任先の研究内容や研究室の雰囲気を夫から前もって詳しく聞けること、(4)そして何より「これを逃したら一生海外留学するチャンスはないだろうな」という確信が私に留学を決意させました。ボスがこのような提案をして下さったのは「自分が夫と同じ研究室出身である」ということが大きかったようです。私を採用した理由として「私と夫の大学院時代の所属研究室の教授を信頼しているから」と仰っていたと後で夫から聞きました。自分の研究背景や人格に対して担保してくれる人がいたからこそ実現した研究留学でした。

現在、私は夫と同じ研究室[A]と同じ大学内の別の研究室[B]の2つの研究室で半分ずつ働いているという稀有な雇用形態にあります。職場における夫の存在は、語学的、文化的に不自由も多い海外で働く上で良い心の支えになってくれましたし、赴任当時はスムーズに研究室や人間関係に溶け込めるという利点もありました。また、お互いのスケジュール調整が簡単で、車なども2台用意する必要がありません(細かいところですが意外と重要です)。反面、頼る人(夫)のいない職場で働くことは甘えや日本語での会話を排除できるという点において、研究者としての修行に専心できると思います。実際、研究室[B]では、自分がより積極的に、社交的になっていると感じます。
現在、子供はいませんが、アメリカでは妊娠した女性が働くことに寛容で、すごくお腹の大きな妊婦さんが出産直前まで研究や仕事をしている光景を目にします。また、子育てを応援しようとする職場の雰囲気はいいなぁと思います。

最後に、夫が海外に留学を決めたときに私に言った台詞を紹介します。「3年で帰ってくる。そしたら一緒に暮らせるから、結婚しよう。」しかし、3年半が経過した今でも夫の帰国はまだ先の話です。……海外留学はなかなか予定通りには行かないなぁ、という話でありました。

2015/09/17

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編集者
今井祐記
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