執筆者:河野 龍義 執筆日:2020年4月27日 国名:アメリカ 所属:インディアナ大学
トピック:研究室運営、海外生活
doi: 10.34536/covid19-003
アメリカ中西部の4州(イリノイ、ミシガン、インディアナ、オハイオ)は隣接しており、日本人研究者の合同カンファレンスや合同論文賞などの活動を行っています。
4州の面積を合計すると約61万平方キロメートル、日本の国土面積の約1.5倍になります。今回の新型コロナウイルスの感染者数は合計で12万を超え、死者数も7300人を越えました(4月30日現在)。ピークを過ぎたとは言え、まだまだ病院数のベッドが足りない地域も多いという状態です。ほとんどの都市で自宅待機命令が出ている中でロックダウン(都市閉鎖)に反対するパレードが起き、部分的に経済活動を再開するとの声明が出たりしています。
私たちの研究室はインディアナポリスのダウンタウンにあり、大学病院内で陽性となったスタッフが出た関係で3月中旬にはリモートワークとなり、すでに1ヶ月半が過ぎています。実験に関しては事前に申請する必要があり、許可証を持参すれば実験できるという状態です。必要不可欠な実験と認められれば実験が可能です。心配事としては卒業間近の大学院生が卒業のために感染の危険よりも実験を優先するような姿勢が見られることです。博士課程の最後の時期というのは元来追い込まれる時期ではありますが、通常よりも精神的に負荷がかかっているのが見受けられましたので柔軟な対応を続けています。学生、ポスドクの心のケアというのはますます課題となってくると思います。 大学の授業については3月よりオンライン授業が開始され、秋学期についてもオンラインで開催することを前提に準備して欲しいとの連絡が来ております。現在試験期間ですがコロナ陽性のために授業や試験に参加できないというような生徒からの連絡もあり、今期の成績についても出席や試験の評価方法について議論を重ねているところです。また授業のオンライン化で評価が上がる先生と下がってしまう先生と明暗が分かれています。質の高い授業を継続することはもちろん大事ですが、まずは変化に戸惑う学生たちの心に寄り添う工夫や余裕も必要になっています。 生活に関しては子供達の授業もオンライン化しました。アメリカは非常事態に備え、様々な面でオンライン化の準備ができているとのことでした。その通りパソコンが支給され、CANVAS、ZOOMなどのシステムが確立されていました。しかしながら当初準備されていた課題は非常に難しく夜中までかかっても終わらない子供達が続出し、友達と会えないなどのストレスをハイレベルのオンライン教育がさらに苦しめていると父兄からも不満が出たようです。現在では週4日程度でこなせる量に減らされ、クラスのみんなで楽しく語り合うだけのレクリエーションとしてのZOOMの時間が多くなって、子供達のストレスも大きく緩和されています。アメリカの小中学校の先生方も非常に柔軟に対応してくださっていると感謝しています。その一方で子供達のゲームや動画に触れる時間が非常に多くなっていて、その影響が依存症のような形で出てくる可能性もこれからの課題となりそうです。家族みんなでスクリーンに対面する時間を制限して対応していますが、特に子供達の成長を考えると信頼できる指針が必要だと強く感じます。