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【COVID-19クライシス#23】小野原 大介(アメリカ・エモリー大学)

更新日:2021年2月14日

執筆者:小野原 大介

執筆日:2021年1月29日

国名:アメリカ

所属:エモリー大学(Associate Academic Research Scientist, Cardiothoracic Surgery)

トピック:研究室運営、海外での生活、雇用状態

doi: 10.34536/covid19-025


 私はジョージア州アトランタにあるエモリー大学に2015年から研究者として勤務しています。エモリー大学では新型コロナの流行に伴い2020年の3月下旬よりほとんどのスタッフは在宅勤務をすることになりました。ただ、大型動物を用いた現在進行形の実験については特例が認められたため、すでに予定されていた(購入し施設内で飼育されていた)ブタの実験(月2-3例程度)がある日のみラボに赴き手術を行い、それ以外の日については在宅勤務となりました。その間、大学内で安全な環境で研究再開できるようにガイドラインが作成され、それを満たした研究室は順次研究が再開できるようになりました。私たちの研究室においては、それぞれの席は6 feet以上離す、マスクは施設内では常に着用する、手洗い・サニタイザーの使用の励行などを遵守することで、6月にはいってからは必要があればラボで研究の再開をしてもいいという許可がおりました。それでも当初は週に2、3日程度の出勤に抑えていましたが巷での感染の流行とは裏腹に研究施設内・研究者やその他スタッフ間での感染流行を認めなかったため年末に入る頃にはほぼ通常勤務と変わらない状況になってきました。現在、ラボでは上司が3つのNIH R01、co-PIとなっている2つのNIH R01を抱えていますが、コロナ禍関係なく今年度の研究資金は予定通り使い切る必要があるとのことで、通常より多くの大型動物の実験を組まれており、昨年12月は5件のブタの手術に3件のブタの心臓MRI検査、今月(1月)は8件のブタの手術に3件のブタのMRIがあり、むしろ通常より忙しい毎日を過ごしています。


 雇用については大学職員の新規雇用や昇進は停止されていますが、ポスドクの採用については大学に申請することにより部分的に許可されているようです。生活面では住んでいる郡によって対応が変わってきますが、私が住んでいるエリアでは学校(小学校から高校)はオンライン授業が昨年の3月より現在にいたるまで続いています。1月より部分的に登校が再開予定でしたがいわゆる流行の第3波を受けて再び中止となり現在もオンラインによる授業(水曜が休みの平日4日の授業)が続いています。ワクチンについては医療従事者や高齢者などハイリスク者を中心に接種が開始されましたが、大学職員であるということでの優先接種はなく、研究職である私たちは現時点でワクチン接種がいつできるのか見通しがたっておりません。


 1月上旬過ぎてから第3波の感染のピークを超えた印象を受けていますが、現在もジョージア州では毎日新規感染者が5000-9000人くらい報告されています。人口約1000万人に対してワクチンの確保が70万本弱、毎日3万6000人のペースで接種が進められていますが、1回でも接種済みの人は人口の5.6%くらいとなっています(https://www.bloomberg.com/graphics/covid-vaccine-tracker-global-distribution/)。ワクチンを打てばもうマスクもしなくていいと思っている人もそこそこいそうなので、ワクチンによる新型コロナ流行の抑制がどれくらい期待できるかは分かりませんが、1日でも早く多くの人々に穏やかな普通の日常が戻ってくることを願ってやみません。


プロフィール

2002年に医学部を卒業後に心臓血管外科に入局。臨床医として13年過ごしたのち2015年8月に基礎研究を行う目的で渡米。同年9月よりエモリー大学心臓胸部外科の研究室でポスドクとして研究者生活をスタート。現在は同研究室でresearch scientistとして主にブタを用いて心不全(虚血性心筋症)と心不全の外科治療法について研究を行なっており、カテーテルデバイスの開発も手がけている。

メールアドレス:donohar@emory.edu


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